個人で事業を営むよりも会社を設立して事業を営んだほうが、1.給与所得控除の適用、2.所得の分散等ができ、税金面で大きなメリットがあります。
また保険・共済加入の点でも有利になります。
1. 所得に給与所得控除が適用される
個人経営の場合、事業主の所得は事業所得等になりますが、会社経営だと経営者の所得は給与所得になります。
給与所得にはサラリーマンの必要経費に相当する給与所得控除があり、その分が収入から差し引かれます。
したがって、収入金額が同じであっても個人経営よりも会社経営のほうが税金上有利です。
なお、給与に占める給与所得控除の控除割合は下の表のとおりです。
給与所得控除早見表
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給与
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給与所得控除
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控除割合
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万円
100 |
万円
65 |
%
65 |
200
|
78
|
39
|
300
|
108
|
36
|
400
|
134
|
34
|
500
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154
|
31
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600
|
174
|
29
|
700
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190
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27
|
800
|
200
|
25
|
900
|
210
|
23
|
1,000
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220
|
22
|
1,200
|
230
|
19
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2. 所得の分散で税率ダウン
個人経営で、いわゆる白色申告の場合、家族に給与を支払うことはできません。
そのため、収入は全て個人事業主1人の収入になります。
ところが会社経営の場合、家族に給与を支払うことができるので、収入を各人に分散させることができます。
所得は累進税率ですので、収入を多くの人に分散できればできるほど、税金の総合計は少なくて済みます。
※ 実際は控除その他の関係で多少税額が異なります。
3. 法人化で所得分散し、給与所得控除を適用したときの節税例
いわゆる白色申告の場合、所得1,000万円はそのまま父1人の所得としなければなりません。
また給与所得控除は適用されません。
その結果、税額合計は268万円になります。
ところが会社の場合、母や後継ぎの息子に給与を支払って所得を分散させることができます。
母と後継ぎの給与には給与所得控除が適用されるばかりか、父の所得も給与になるので給与所得控除が適用されます。
その結果、税額合計は53万円になります。
法人化することによって、実に215万円、約80%もの税金が減額できたことになり、法人化がいかに有利であるかがわかると思います。
(なお、下の計算で所得控除の額は概算額です。)
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→
法人化 → |
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4. 生命保険の保険料を経費にできる
個人で生命保険に加入する場合、契約者=夫、被保険者=夫、死亡保険受取人=妻というように、契約者・被保険者・保険受取人をすべて個人とせざるをえません。
ところが生命保険は会社契約でも契約でき、会社の場合は、契約者=会社、被保険者=社長、死亡保険受取人=会社というような契約形態を選択することもできます。
会社契約のメリットは、保険種類によっては保険料(=掛金)を経費、すなわち損金算入できることです。
一概に、貯蓄型の保険の保険料は資産計上することになっていますが、掛け捨て型の保険の加入料は損金算入することができます。
5. 小規模企業共済に役員全員で加入できる
小規模企業共済は、自営業者や小さな会社の経営者の退職金準備や廃業時の備えになるものです。
それだけでなく、所得税と住民税で大きな節税効果が期待できます。
個人事業者の場合は、個人事業者一人で加入せざるをえませんが、会社の場合は役員であれば加入することができます。
したがって、父が社長で母が専務、息子が取締役の場合などは全員加入でき、全員の退職金準備ができて全員の節税になります。
個人経営と会社経営を比べると、会社経営の場合は給与所得控除が適用されることに、まずメリットがあります。
さらに一緒に仕事をしている家族などへ所得を分散することが可能になり、その結果税金トータルを大幅に少なくさせることも可能です。